三八五交通事件(仙台高判平6・12・19) 組合併存下の配車回数の差は差別? 「特段の事情」なく不当労働行為 ★
収入に大きく影響 不利益扱いに該る
筆者:弁護士 加茂 善仁(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、①収入の多い観光ハイヤーの配車について、組合員を差別したこと、②36協定の期間に関する組合の対案(1カ月)が短すぎるとして、36協定の締結を拒否し、組合員を一定の営業所のみに集め、その結果、別組合が過半数以上を組織する状態になった営業所においてのみ36協定を締結し、組合員には残業をさせなかったことが不当労働行為として争われたものである。
一審の青森地判平2・1・23は、①配車問題について「参加人組合と他組合の組合員別1人当たり平均配車回数を比較すると、他組合の組合員の方が参加人組合員よりおよそ2倍程度になっており、観光ハイヤーの配車の有無が、中型乗務員の収入に直接大きく影響するというのであるから、このような大きな格差が同一企業内の2つの労働組合間に存在することは、特段の事情がない限り、それだけで不利益扱いによる差別であると推認せざるを得ない」として、労組法7条3号の不当労働行為に該当するとし、また、②36協定締結を拒否し残業をさせなかったことについては、参加人組合に対し不利益取扱いをすることにより同組合の弱体化を図ったものであり、労組法7条1号及び3号に該当する不当労働行為であるとした。
これに対し、会社が控訴した。控訴の理由は、①観光ハイヤーの配車回数が差別となるか否かを判断するには、その運用実態によるものであるところ、会社では、担当者(観光ハイヤーに利用される中型車の車両責任者)を対象として配車回数を決定しており、スペア(中型車の担当者が公休などで乗務しない場合に乗務するもの)は除外していたのであるから配車回数を比べる場合は、担当者のみで比較すべきであるということ、②36協定締結拒否に関し、併存組合下において一方の組合に対する36協定の締結、不締結が不当労働行為になるか否かの判断に際しては、当該企業が両組合に対して平等な対応をしたか否かが唯一の判断方法であるべきであり、本件では、会社は、両組合に対し36協定の期間を1年間として要請してきたのであり、かかる取扱いが不当労働行為に該当することはあり得ない、ということであった。控訴棄却。
判決のポイント
①会社における中型車の担当者とスペアの違いは、…
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