山口観光事件(大阪地判平7・6・28) 経歴詐称が“解雇通告”後に判明 通告時の理由以外はダメ
信頼著しく損うと予備的解雇認める
筆者:弁護士 山田 靖典(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、平成3年11月、Y社との間において来客にマッサージを行い、客1人につき所要時間により2100円又は1400円の歩合給を、毎月25日締め、当月末日払いの約定で支払う旨の契約を締結した。その際、Xは、昭和9年7月25日生(当時57歳3カ月)であるにもかかわらず、履歴書に昭和21年7月25日生と記載して提出した。
Xは、平成5年8月31日、Y社担当者に対し、電話で「連日のマッサージ勤務により疲労困憊したので、翌日(同年9月1日)から2日間休みたい」旨申し出て、休暇を請求した。これに対し、Y社代表者は、「こっちはローテーションを組んでやっている勝手に休まれたのでは、仕事にならない。お前みたいなものは、もう必要ないので辞めてくれ明日から来なくてよい」と通告した。
Xは同年10月1日、内容証明郵便により原職復帰を求めたが、Y社がこれを拒否したため、地位保全等仮処分申請、解雇無効確認等の起訴を提起した。
Y社は、一連の裁判の過程で①XとY社との契約は雇用契約でない、②仮に雇用契約であるとしても、Xを8月31日に懲戒解雇した、③また、懲戒解雇事由がないとしても普通解雇として有効であると争ったが、平成6年4月11日、地位保全等仮処分事件の答弁書において、本件解雇が無効な場合、Xが採用の際に提出した履歴書に虚偽の事実を記載したことを理由に、予備的に懲戒解雇した。
判決のポイント
懲戒解雇は、使用者が、労働者に就業規則所定の企業秩序に違反する非違行為があったことを理由として、当該労働者に対し、一種の制裁罰を科する性質を有するものであり、その効力は、使用者が懲戒解雇の理由とした労働者の当該行為について判断されるべきである。
したがって、Xについて、…
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