国・津山労基署長事件(大阪地判令2・5・29) 業務委託の契約ライダーがケガして労災を請求 場所や時間的拘束され労働者
会社からの業務委託でバイクをテスト走行する契約ライダーが、ケガをして労災不支給処分となったため、その取消しを求めた。契約で損害は本人負担とされ、自営業を営み専属性がないなどと国は主張した。大阪地裁は、走行中の具体的な指示、時間的・場所的な拘束性、諾否の自由などから、業務遂行上の指揮監督下にあり労働者と判断。数日間滞在する必要があり、その間仕事は困難だった。
一定の専属性あり 不支給処分取消し
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、18歳から30歳までバイクレースに出場しており、オートバイの国際A級ライセンスを取得して、国際A級バイクレースに出場した経験を有する者である。
Z社は、タイヤの製造販売等を業とする会社である。
Z社は、テストセンター等において、二輪車用タイヤの開発テスト(以下、「開発テスト」)を実施しており、開発テストに参加するテストライダー(本件会社の社員であるテストライダーを除く)との間で、開発テスト業務を委託する旨の委託契約書を作成していた(以下、同契約書に基づいて参加するテストライダーを「契約ライダー」、Z社の社員であるテストライダーを「社員ライダー」)。XとZ社は、平成19年頃以降、1年ごとに委託契約書を作成していた。
Xは、平成29年5月20日、テストセンターにおいてテスト走行に従事していたところ、転倒する事故(以下、「本件事故」)が発生し、これにより胸髄損傷、第2頚椎椎体骨折、第3胸椎脱臼骨折および第4胸椎圧迫骨折の傷害を負い、その後、リハビリ等の治療を受けたものの、後遺障害が残存した。
Xは、津山労働基準監督署長(以下「処分行政庁」)に対し、労災法に基づく療養補償給付、障害補償給付および介護補償給付の各請求をしたところ、処分行政庁は、Xが本件会社の労働者に該当しないとして、これらをいずれも支給しない旨の処分(以下「本件各処分」)をした。岡山労働者災害補償保険審査官もXの請求を棄却したことにより、Xは、本件各処分の取消しを求めて、本件訴訟を提起した。
判決のポイント
労災保険法は、…
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