学校法人奈良学園事件(奈良地判令2・7・21) 学部廃止で解雇や雇止めされた教員が地位確認 職種限定も整理解雇は無効
大学の学部廃止に伴い解雇、雇止めされた教授や専任講師らが地位確認を求めた。奈良地裁は、職種限定で雇用されたとしても整理解雇法理の適用は排除されないと判断。異動は不可能といえず、総人件費引下げの努力もなく解雇回避努力を尽くしたとは認めなかった。経営破たんなど逼迫した財政状態にはなく、労組と協議が尽くされたともいえないなど4要素を欠くとした。
異動不可能でない 人件費削る努力を
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
Y法人は大学(以下「本件大学」)のほか、女子短大、高等学校、中学校、小学校、幼稚園を運営する学校法人である。本件大学は、平成19年4月以降、ビジネス学部と情報学部(以下「本件両学部」)の2学部から構成されていた。
X1~7(以下総称する場合は「Xら」)は、Y法人と労働契約を締結し、平成26年4月以降、本件大学の本件両学部で教授、准教授または専任講師として勤務していた。平成29年3月31日当時、X1~4は、Y法人と無期労働契約を締結しており、X5は別大学を65歳で定年退職後、Y法人と労働契約を締結し(有期か無期かは争いあり)、X6、X7は、本件大学の前身の大学(以下「本件前身大学」)で勤務し65歳で定年退職後、Y法人との間で期間1年の有期労働契約を締結していた。
平成29年3月31日、Y法人は、X1~X5を解雇し(以下「本件解雇」)、X6~7に対しては同日を終期とする有期労働契約の更新を拒絶した(以下「本件雇止め」)。
Y法人は平成22年度の日本高等教育評価機構による認証評価において、本件大学の収容定員に対する在籍学生数の大幅な未充足の状態が続いており、法人および大学の帰属収支差額が平成18年度以降連続して大幅なマイナスとなっており、抜本的な改善が必要と判定された。平成24年1月、Y法人は、平成26年度、他学部を新設することおよび本件前身大学の名称を本件大学とすることを決定し、平成25年8月、平成26年度で本件両学部の学生募集を停止し、在籍学生がゼロになった時点で本件両学部を廃止することを決定した。その後、Y法人は、平成28年8月の書面で、本件両学部の学生の大半が平成29年3月末までに卒業することや逼迫したY法人の財務状況を理由に、本件雇止めを通知し、平成29年2月の書面で、本件解雇の予告を行った(同書面には、本件両学部の学生募集の停止によりX1~5が過員となったこと、Y法人の財務状況から過員の教員を雇用する余裕がないこと等が解雇事由に該当すると記載されていた)。
Xらは、本件解雇および本件雇止めが労契法16条および19条に反すること等により無効であるとして、Y法人に対して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認および平成29年4月以降の未払賃金等の支払いを求めて提訴した。
なお、実際の本件における争点は多岐に亘るが、本稿では、本件解雇および本件雇止めが、労契法16条、19条に照らして有効であるか否かの争点に絞って解説することとする。
判決のポイント
Xらは、…
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