東京現代事件(東京地判平31・3・8) 競業行為で解雇に、取締役は就労知っていた!? 兼業の許可あったと認めず
無許可で同業他社の役員になるなど兼業禁止の服務規律違反を理由に即時解雇した事案。地位確認請求に対して東京地裁は、当時の代表取締役は兼業の事実を知っていたがそれをもって許可したとはいえないと判断。会社のPCを使って情報の一部を流用するなど解雇は社会通念上相当とした。兼業禁止は就業規則の解雇事由と定められていなかったが、同事由を例示列挙としている。
服務規律に反する 処分事由は“例示”
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
本件は、コンピューターのソフトウェアおよびハードウェア製品の製造、販売、輸出入、プログラマーやシステムエンジニアの派遣業務等を行う株式会社であるYの従業員であったXが、平成29年6月29日に業績不良を理由に即時解雇されたことについて、解雇事由が存在せず解雇権の濫用で無効として、Yに対し、労働契約に基づく地位の確認、不法行為に基づく損害賠償等の支払いを求めた。
(1)Yは、システム・エンジニアリング・サービス(以下「SES」)、データ入力業務等のビジネス・プロセス・アウトソーシング(以下「BPO」)等の事業を行う株式会社である。代表取締役は、平成26年5月1日~28年8月31日まではB、同年9月1日~29年5月8日まではC、同日からはDである。
(2)Xは平成23年3月1日頃、Yと期間の定めのない雇用契約を締結し、ソフト開発営業、SESの営業等に従事していた。
(3)A社は、平成24年に設立された株式会社で、その事業内容は、SES、オフショア開発、BPO等である。A社は、設立時から前記Bが代表取締役であり、平成26年12月1日~28年12月31日まではXが取締役を務めた。
(4)Yは、平成29年6月29日、Xに対し、解雇予告手当を支払わず口頭で即時解雇の意思表示をした(以下「本件解雇」)。
Yの就業規則には次の定めがある。
2条 社員は次の事項を遵守しなければならない。
(ア)6号 許可なく服務以外の目的で会社の設備、機器その他の物品を使用しないこと
(イ)24号 会社の許可なく他の会社の役員若しくは社員となり、または自己の営業を行わないこと、また、他の会社(人)から一時的労働の報酬として金銭等を受け取らないこと
Bは、平成24年12月にYと競業するA社を起業し、Xは、A社の営業方針等についてBの相談に助言する等し、平成26年頃から、A社の受託開発の営業による報酬を得るようになった。Xは、平成26年12月1日にA社の取締役に就任し、取締役としての報酬を当初は毎月25万円、その後毎月30万円を得るようになった。Xは、Yに在職中、A社での副業をしていることをY代表者に説明していなかった。
Yは、平成29年6月26日にXに対し、雇用契約から業務委託契約への切り替えを求めたが、Xはこれを断った。Yは、同月29日、本件解雇をした。
争点は複数に及ぶが、競業避止義務違反を理由とする解雇について紹介する。…
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