ELCジャパン事件(東京地判令2・12・18) 退職勧奨拒否するたびに異動、違法無効と提訴 部署閉鎖され配転降格有効
2度にわたり退職勧奨され、拒否するたびに降格や配置転換されたのは不当として従業員が訴えた。東京地裁は、海外本社の組織変更に伴い所属チームがなくなるなど配転には業務上の必要性があり、緩和措置として基本給も遜色ない額が支払われ不利益も大きくないと判断。職種限定合意は認められないとしたうえで、就業規則で配転に伴い職務等級の変更があり得ることも規定していた。
職種限定と認めず 基本給不利益なく
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
従業員甲は、平成22年5月、会社(本社を米国におき、化粧品等およびその原材料の製造・販売等を営む企業の日本法人である)に、製品企画開発部のマネジメントグループのマネージャーとして入社した。しかし、日本法人の製品企画開発部が平成28年6月末をもって閉鎖されることになり、これに伴い、会社は甲に退職勧奨を行ったが、甲はこれに応じなかった。そのため、同年7月、会社は従前の経験を活かすことができる別部署のアシスタントマネージャーに異動させた(本件降格)。
その後、異動後の部署も解体されることになったため、会社は再度甲に対して退職勧奨を行ったが、甲は応じなかった。そこで、会社は甲に対し、平成29年5月10日、会社内のメール業務、職場環境の整備に関する業務を行っていたメール室への異動を命じ(配転①)、令和2年2月からは、甲を翻訳業務に従事させた(同年9月1日、正式に甲に対して同業務に従事するよう命じた〈配転②〉)。
甲は、(1)採用時の等級にあることの確認、(2)配転①により配転先で勤務する雇用契約上の義務を負わないことの確認、(3)上記降格や人事評価が不当であるとして、雇用契約に基づき、平成27年度以降に支払われた賞与支給額と平成26年度の賞与支給額の差額等の支払いを求めた。
本判決はおよそ以下のように判示して、甲の請求を全部斥けた。
判決のポイント
(1)就業規則により、…
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