口外禁止条項事件(長崎地判令2・12・1) 労働審判の内容で精神的苦痛と国へ賠償求める “口外禁止”を盛り込み違法
雇止めされたドライバーが労働審判の内容を口外しないよう命じられ、精神的苦痛を受けたとして、国に損害賠償を求めた。長崎地裁は、労働者は調停案に口外禁止条項を盛り込むことを明確に拒絶しており、同条項を受け容れる可能性はなく、内容の相当性を欠き違法と認定。労働者に過大な負担を強いるとした。国の責任に関しては、審判に違法または不当な目的はなかったとして斥けた。
労働者明確に拒絶 過大な負担強いる
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
原告は、会社との間で主にバス運転士として勤務していたところ、雇止めされたため、地位確認等を求める労働審判手続きを申し立てた。労働審判委員会は、原告に口外禁止条項を付した内容での調停を試みたところ、原告からこれを拒否されたにもかかわらず、平成30年2月8日、口外禁止条項を含む労働審判を行った。本件は、労働審判法20条1項および2項に違反して、原告の表現の自由(憲法21条)、思想良心の自由(同19条)および幸福追求権(同13条)を侵害し、原告に精神的損害を生じさせたと主張して、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償請求として、被告に対し、慰謝料140万円等の支払いを求めた事案である。
判決のポイント
1 労働審判は、審理の結果認められる当事者間の権利関係及び労働審判手続の経過を踏まえてされるものであるから(労働審判法20条1項)、その内容は事案の解決のために相当なものでなければならないという相当性の要件を満たす必要があると考えられる。そして…
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