センバ流通(仮処分)事件(仙台地決令2・8・21) コロナでタクシーの売上減、有期契約中に解雇 雇調金を使わず解雇は無効
新型コロナウイルスの影響で売上げが減ったタクシー会社の運転者が、有期契約の期間途中で解雇されたため、地位保全等を求めた。仙台地裁は、雇用調整助成金等の利用が可能にもかかわらず利用せず、解雇を無効とした。整理解雇の4要素を当てはめ、人員削減の必要性は倒産が必至であるほど緊急かつ高度とは認められず、人員選択の合理性、団交における説明も不十分だった。
“4要素”から判断 倒産必至でもなく
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
債務者は仙台市内全域を営業エリアとするタクシー会社、債権者らは契約期間を1年ないし5年とする有期労働契約を締結してタクシー運転者として勤務していたものであり、H一般労組Y支部の組合員である。
申立外Eは、債務者設立以降平成24年2月まで同社の代表取締役であり、平成31年1月31日以降、再度経営に関与するようになった者、申立外F社はEが代表者に就任している会社である。平成27年度以降、債務者は203万~749万円の営業損失が続き、平成31年4月末で774万円の債務超過であった。
令和2年3月以降、新型コロナ感染症の影響によりタクシー利用客が減少し、売上げが減少したため、債務者は、10~16人程度稼働させていた従業員のうち4人程度を除いて休業させ、稼働させた従業員も残業・夜勤を禁止し、取引先に対し燃料費等の値引き交渉を行ったものの、令和2年3月は374万円、同年4月は1415万円の支出超過となり、4月末時点の債務超過額は3133万円であった(負債額7234万円のうち2900万円はEおよびFに対する負債)。
令和2年4月当時、雇用調整助成金の助成率の引上げや、休車中の保険料・燃料費・整備費・車検の免除などの特例措置が講じられていたが、債務者は、それらの特例措置を利用することなく、令和2年4月30日、本件支部との団体交渉の席上で、債権者らを解雇した。債権者らは本件解雇が無効であるとして仮処分申立てを行った。なお本件解雇時の債権者らの契約残存期間は4カ月~3年であった。
決定のポイント
①「やむを得ない事由」(労契法17条1項)…の判断に当たっては…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら