伊藤忠・シーアイマテックス事件(東京地判令2・2・25) 出向先から海外出張中に事故、損害賠償責任は 国外の交通事故予見できず
2021.08.19
【判決日:2020.02.25】
出向していた労働者がマレーシアへの出張中に交通事故に遭い、出向先らに安全配慮義務違反の損害賠償を求めた。車を手配したのは、出向先の従業員(現地の事業会社へ出向中)だった。東京地裁は、具体的な危険が存在することは予見困難と請求を斥けた。直近の事故の統計や分析のみでは同国内の交通事情を推認することは困難など、同義務違反を怠ったとはいえないとした。
道路事情など不明 安配義務反しない
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
X1は、Y2に雇用され、Y1に出向していた。平成25年7月、X1は、マレーシアへの出張中に、Y1の現地の関連会社であるZの従業員Cが運転する自動車に同乗したところ、交通事故に遭い、重傷を負った。
本件は、X1が、本件事故を原因として、Y1らに対し、債務不履行(安全配慮義務違反)、使用者責任または自賠法3条に基づき、損害賠償等の支払いを求めた事案である。本判決はXらの請求をいずれも棄却した。
本件の争点は、①出向先であるY1の安全配慮義務違反の有無等、②出向元であるY2の安全配慮義務違反の有無等、③本件事故に係る不法行為によって生ずる債権の成立および効力の準拠法等、④Y1の使用者責任の有無、⑤Y2の使用者責任の有無、Y1、Y2の自賠法3条に基づく責任の有無等であるが、①について紹介する。
判決のポイント
Y1の安全配慮義務違反の有無等
使用者は、労働契約に伴い、労働者がその生命、身体等の安全を確保しつつ…
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令和3年8月23日第3317号14面 掲載