新日本建設運輸事件(東京高判令2・1・30) 再就職してバックペイ請求を一部斥けた一審は 黙示の退職合意は成立せず
2021.08.26
【判決日:2020.01.30】
賃上げ交渉をめぐり業務に支障を生じさせたとして解雇された元従業員が、解雇無効と賃金支払いを求めた。一審は、再就職から半年ないし1年経過時点で、就労の意思を喪失し黙示の退職合意が成立するとしたのに対し、東京高裁は、再就職後も同水準の賃金を得ていた事実をもって退職合意は成立しないと判断。他社収入を一部控除したうえで判決確定日まで賃金の支払いを命じている。
“就労意思”有する 判決日まで賃金を
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
一審原告(被控訴人)は、一審被告会社(控訴人)との間で労働契約を締結していたが、平成28年6月25日付けで普通解雇され、解雇無効と主張して、①労働契約上の権利を有する地位にあることの確認を求めるとともに、②解雇後の月例賃金と遅延損害金の支払いを求めた。
一審(東京地判平31・4・25)は、解雇は無効であるが、平成29年11月21日の時点で、控訴人と被控訴人との間で被控訴人が控訴人を退職することについて黙示の合意が成立したと判断し、被控訴人の請求のうち、①を棄却し、②のうち平成29年11月分までの賃金から中間利益を控除した金額と遅延損害金の支払いを求める限度で認容し、その余を棄却した。そこで控訴人が控訴し、被控訴人が附帯控訴した。
判決のポイント
被控訴人は、本件解雇後…
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令和3年8月30日第3318号14面 掲載