L産業(職務等級降級)事件(東京地判平27・10・30) プロジェクト解散で降級、管理職の地位と賃金請求 減収生じる職務変更有効に
新薬開発のプロジェクト解散による職務変更で、一般職へ降級された元リーダーが、管理職の地位確認等を求めた。東京地裁は最高裁判決を踏襲し、配転降格が人事権濫用に当たるか判断。同等級で配転可能な職務はなくポスト新設も裁量に委ねられること、年60万円弱の減額は年収の約6%で少なくないが、不利益は甘受すべき程度を超えるとはいい難いとして請求を斥けた。
人事権の濫用なし 年収6%減を認容
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Y社では平成18年4月、資格体系のベースを「職能(人)」から「職務(仕事)」に改め、職務等級制の人事給与制度を導入した。XはY社のチームリーダーとして「マネジメント職」の職務等級(グレード)「E1」に格付けされていたが、平成25年7月、職務変更に伴いグレードが降級され賃金の減額がなされた。
Xは、当該措置が無効であるとして、降級前の等級につき労働契約上の地位を有することの確認、降級前後の月額給与の差額および賞与の差額、精神的苦痛を被ったことを理由とする不法行為に基づく損害賠償金等の支払いを求めて提訴した。
判決のポイント
1 配転に伴うグレード格下げの判断枠組み
使用者は、労働契約上の根拠を有する場合には、業務上の必要に応じて、人事権の行使としてその裁量により勤務場所や担当業務を決定することができるが、これを濫用することは許されない。…業務上の必要性がない場合又は業務上の必要性が存する場合であっても、それが他の不当な動機・目的を持ってされたものであるとき若しくは…通常甘受すべき程度を著しく超える不利益を負わせるものであるとき等、特段の事情がある場合には、人事権の濫用として無効になる(東亜ペイント事件=最判昭61・7・14)。…
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