空調服事件(東京高判平28・8・3) 社労士有資格者をパート採用、1カ月の試用で解雇 労務担当者として資質欠く
社労士有資格者をパートとして中途採用したが、会議の発言を理由に1カ月の試用中解雇した。人事労務の機微に触れる情報を管理できる前提で採用したが、社員の情報共有の場である会議で突然「決算書は誤り」と発言したもので、事前に関係者の確認を怠り単なる自己アピールに過ぎないとして、承知していたら採用することはない資質に関わる情報で解雇有効とした。
突然「決算誤り」と 単なる自己主張で
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
本件は、Xが、Yに対し、①Yによる解雇の有効性を否定して、労働契約上の地位を有することの確認、同地位を前提とした労働契約に基づく給与等の支払いを求め、併せて、②YがXに担当職務を説明しなかったこと、健康保険被保険者証を交付しなかったことおよび上記解雇が不法行為に該当するとして、損害賠償等の支払いを求めた事案である。
一審(東京地判平28・3・8)は、Xの請求のうち、①の請求を認め、その余は棄却した。控訴審は、Xの控訴を棄却するとともに、Yの付帯控訴を認めた。
上記のとおり、争点は2つであるが、①の解雇の有効性について紹介する。
判決のポイント
Yは、Xとの間で、「パート従業員雇用契約書」…を交わし、…採用後1カ月は試用期間とし、能力・技能、勤務態度、健康状態について不適切と認めた場合は採用を取り消す、…との契約が成立したものと認められる。
本件解雇は、試用期間中にYに留保された解約権の行使として行われたものである。…使用者による試用期間中の労働者に対する留保解約権の行使は、本採用後の通常解雇より広い範囲で認められるべきであるが、…
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