海外需要開拓支援機構ほか事件(東京地判令2・3・3) 派遣先の懇親会行事で精神的苦痛受けたと提訴 職場環境配慮義務違反なし
派遣先でのセクハラや懇親会行事で精神的苦痛を受けたとして、派遣労働者が会社の職場環境配慮義務違反を理由に損害賠償を求めた。東京地裁は行為を一部違法と認めたが、派遣先が労働者の通報を受け適切な調査をし、加害者へ厳重注意したことを評価。派遣元の責任に関しては、原告自身が相談窓口を利用せず、具体的措置を求めていないことなどから、同義務違反は認められないとした。
通報受け社内調査 「元」の責任も否定
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
被告B社は、株式会社海外需要開拓支援機構法に基づき設立された会社、被告Dは被告B社の専務執行役員、被告Cは被告B社の専務取締役兼最高投資責任者、被告F社は派遣会社、原告は被告F社から被告B社に派遣された派遣労働者である。
①被告Cは、終業後にカラオケ店で開催した懇親会において、「当たり!!ワインディナーwith監査役(交換不可)」などと記載された紙片10枚を封筒に入れたくじ引きを、原告を含む女性従業員らに対し、同封筒から引かせた(以下「本件くじ引き」という)。
②原告が①などの行為について被告B社の社外ホットラインに通報したため(以下「本件通報」という)、被告B社は、原告および関係者から事情聴取のうえ、調査結果に基づく法的助言を依頼した弁護士より本件くじ引きはセクハラに該当しないが適切さを欠いている旨、その他、セクハラ行為は目撃証言がなく存在を認定できない旨の助言を得た。被告B社は被告Cに対し厳重注意をしたうえで、原告に対し、上記調査結果と社内研修等により再発防止を図ることを説明した。
③本件通報後、原告は、被告F社の担当者と面談した際、本件くじ引きについて相談したが、被告B社による調査結果を待つことに同意し、またその後、被告F社より②の調査結果を伝えられた後も、被告F社にとくに対応を求めることはしなかった。
④原告は、被告CおよびDに対し本件セクハラ行為等が不法行為に当たるとして(編注:二審〈東京高判令3・5・13〉では、被告Dの不法行為の成立は認められないとした)、また被告B社および被告F社に対し職場環境配慮、整備義務違反を理由として、損害賠償を求める訴訟を提起した。
判決のポイント
①被告Cが本件くじ引きをさせた行為は、…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら