トールエクスプレスジャパン事件(大阪高判令3・2・25) 能率手当の計算で残業代控除を認めた一審は? 歩合給に時間効率反映も可
歩合給である能率手当から時間外割増賃金相当分を引かれた貨物の集配ドライバーが、未払賃金を求めた。大阪高裁も一審同様、割増賃金は明確に区分され対価性も有すると判断。業務の「時間的効率向上」を考慮要素とする制度には合理性が認められ、過半数労組と合意のうえ導入・改定していた。集配順や経路に裁量があり時間短縮が可能としている。賃金全体では固定給が6割以上を占めていた。
割増分判別できる 過半数労組と合意
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Xらは、貨物自動車運送事業等を目的とするYとの間で労働契約を締結し、集荷・配達業務に従事していた者である。Yの時間外手当は、時間外手当A、Bおよび(平成26年12月の改定後は)Cにより構成され、いずれも労基法所定の計算方法により算定されている。時間外手当A・Cは能率手当を除く基準内賃金を基礎に計算され、Cは、60時間を超える時間外労働に対するものであり、Bは能率手当を計算の基礎とするものである。Xらは、能率手当の計算に当たり、業務結果等により算出される額(賃金対象額)から時間外手当に相当する額を控除しているため、労基法37条所定の割増賃金の一部が未払いであるなどと主張して、未払いの割増賃金および付加金等の支払いを求めて提訴した。地裁(大阪地判平31・3・20)は、労働時間に応じた労働効率性を能率手当の金額に反映させるための仕組みとして合理性を是認することができ、労基法37条の趣旨や公序良俗に反するとはいえないとしてXらの請求を棄却した(Xらは控訴)。
判決のポイント
1 割増賃金の支払い有無に関する判断基準
時間外労働に対して、…
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