ダイレックス事件(長崎地判令3・2・26) 月200時間で1カ月変形、割増30時間のみ? 週40時間平均超え制度無効
1カ月単位の変形労働時間制を導入し、残業30時間を加えた勤務割を組んでいたところ、従業員が未払割増賃金を求めた。長崎地裁は、週40時間平均の条件を満たさず制度を無効とした。残業を月30時間以内にするよう指示し、退社時刻等も修正していた。その他、親会社主催のセミナーの参加時間は、指揮命令下にあるとした。既払額との差額と付加金の支払いを命じる。
残業の上限を指示 勤怠データも調整
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
甲事件は、原告が時間外労働等を行ったと主張して、被告会社に対し、割増賃金と付加金等の支払いを求めた事案であり、乙事件は、被告会社が原告に対し、消費貸借契約に基づき、セミナー受講料、それに要した交通費・宿泊費等の支払いを求めた事案である(以下、乙事件については割愛)。
被告の就業規則には、毎月1日を起算日とする1カ月単位の変形労働時間制を採ること、所定労働時間は1カ月を平均して1週間40時間とすること、その所定労働時間、所定労働日ごとの始業および終業時間は事前に作成する稼働計画表により通知されることが定められていた。
各店舗の店長は、店舗の全従業員分について、前月末ころ、翌月分の稼働計画表を掲示していた。その計画表には、当月の各日における出勤日と公休日の区別、出勤日について出社時間、退社時間、休憩時間が記載されていた。これにより設定された労働時間の合計は、1カ月の所定労働時間に、あらかじめ30時間が加算されたもの(暦日数が31日の場合は207時間、30日の場合は201.25時間等)であった。
判決のポイント
変形労働時間制が有効であるためには、…
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