ヴィディヤコーヒー事件(大阪地判令3・3・26) 事業譲渡後も同じ店で勤務、労働条件引継ぐ? 退職金債務負うのは転籍元
事業譲渡後も同じコーヒーショップで勤務していた店長が、転籍先へ退職金を請求した事案。「退職金制度あり」の譲渡会社から、「同制度なし」の譲受会社へ転籍した。大阪地裁は、会社間の事業譲渡契約において、転籍元で発生した退職金債務を転籍先が引き受ける合意は認められないと判断。転籍先への支払い請求を斥けた。転籍元の役員は店長に対し、退職金は支払うと説明していた。
引受け合意認めず 「先」に制度なく
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
原告は、ダートコーヒー㈱(後に会社分割を行い、補助参加人に商号を変更した)に採用され、旧ダートが経営する店舗で勤務し、旧ダートが被告に同店舗の事業を譲渡した後も同店舗で引き続き勤務して退職した。本件は、原告が、被告に対し、(1)主位的に、被告は旧ダートから原告との間の雇用契約を従前の労働条件のまま引き継いだと主張し、雇用契約終了に基づく退職金請求を、(2)予備的に、被告は旧ダートから原告に対する退職金債務を引受け、または会社法22条1項に基づき譲受会社として同債務を弁済する責任があると主張し、債務引受または会社法22条1項に基づき、旧ダートで勤務していた期間にかかる退職金の支払いを求め、補助参加人が原告に補助参加した事案である。
判決のポイント
1、旧ダートとVidya(平成27年11月25日、本件店舗等の事業譲受会社として被告を設立)との間で、本件事業譲渡契約の条件交渉の際、本件店舗等の従業員の処遇について、…
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