リクルートスタッフィング事件(大阪地判令3・2・25) 登録型派遣スタッフに交通費支給せず違法性は 通勤手当なし不合理でない
登録型の派遣スタッフが通勤手当を支給されず、不合理な待遇を禁じた旧労働契約法20条違反と訴えた。大阪地裁は、手当は配転命令による負担等へ配慮する趣旨を有すると判断。原告が比較した社員とは、法20条の3要素のうち職務内容や配置の変更範囲が大きく異なり、交通費を自己負担しても時給額は不合理とはいえない金額だったことから、不支給を不合理ではないとした。
配転有無に相違が 時給額も考慮して
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
被告は人材派遣事業等を行う会社、原告は派遣スタッフおよびOSスタッフ(被告の受託業務に従事する有期契約社員。以下「派遣スタッフ等」という)として登録し、被告との間で有期労働契約を締結して派遣先事業所等において業務に従事していた。被告では、雇用形態等の相違によって職種が16(有期8種、無期8種)に区分されており、職種ごとに異なる就業規則が定められている。
派遣スタッフ等は、就労に先立ち、希望条件に沿った就業条件の派遣業務等(JOB)を選択し、特定の職務・就労場所において勤務し、兼業も自由とされているが、その他の有期および無期契約労働者には配転の可能性があり、兼業も禁止されていた。また被告では平成元年頃までは派遣スタッフ等にも通勤手当を支給していたが、求人が困難となったため時給額を増額することとし通勤交通費を支給する取扱いを止めたが、求人に困難を来すもの等については、通勤交通費を支給することがあった。また、派遣スタッフ等が無期転換権を行使した際には、無期転換前の時給から通勤交通費を外出しし基本給を設計している。
派遣スタッフ等には、原則通勤交通費は支給されないが、その他の有期および無期契約労働者には通勤手当が支給(上限があるが原則実費を全額支給)される。
原告は、通勤手当に係る相違は旧労契法20条違反であると主張して訴訟を提起した。
判決のポイント
通勤手当…
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