DIPS事件(東京地判平26・4・4) 営業手当は月30時間分の時間外割増賃金に当たるか 固定残業代の性質有さない
アルバイトのシフト管理や指導をする者が、営業手当を月30時間分の割増賃金とする定めは無効として未払賃金等を求めた。東京地裁は30時間を超えるのは明白だが、出勤簿等から時間管理の意思がないことが推認できるほか、手当は成績で減給され固定残業代の性質とは相容れないと判示。時間外見合いの合意が成立したとは認め難いとした。
成績悪ければ減給 超過明白だが放置
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
Y社は、不動産の売買、賃貸借管理およびこれらの仲介業等を目的とする株式会社である。
Y社の就業規則には、内勤者の始業・終業の時刻は午前9時半から午後6時半(休憩は午後1時から2時)、営業は午前9時半から午後7時半(休憩は2回、1時間ずつ)と定められ、賃金規程には、営業手当は時間外労働割増賃金で月30時間相当分として支給すること、住宅手当は1万円から5万円を支給することが定められていた。
平成16年3月頃、Xは、期間の定めのない社員として、主にアルバイトスタッフの営業活動の管理・指導を業務内容とする労働契約を締結した。Xの賃金は、平成21年6月16日ないし22年2月15日の間は基本給22万円、役職手当10万円、住宅手当5万円、営業手当10万円のほか諸手当を含めて合計54万5910円であり、その後何回か変動を経た。
平成22年12月17日、Y社は、Xがアルバイト料の名で受領権限のない金員を詐取したなどとしてXを懲戒解雇し、同年11月16日から12月15日分の賃金および同月16日から23年1月15日の所定内賃金を支払わなかった。…
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