千葉県がんセンター事件(東京高判平26・5・21) 麻酔担当外され退職、問題上申した報復と賠償請求 内部通報理由の不利益扱い
麻酔医が手術担当を外され退職を余儀なくされたのは内部通報の報復と訴えた事案で、慰謝料を命じた一審を不服として病院が控訴した。東京高裁は一審を踏襲し、手術件数に顕著な減少がないにもかかわらず不可解で、所属部長は自らを通さず研修の問題点を上申したことを敵対的行為と受けとめ手術室予定表の作成権限を濫用したもので違法とした。
権利濫用に当たる 手術件数変わらず
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
千葉県が設置する千葉県がんセンター(がんセンター病院)の手術管理部に勤務する麻酔科の医師であった甲が、同部において実施された歯科医師の医科麻酔科研修の問題点について、手術管理部の部長Aを通すことなく、がんセンターのセンター長に直接上申したところ、手術管理部長Aから、がんセンター病院において実施される一切の手術の麻酔担当から外すなどの報復を受け、退職を余儀なくされたと主張して、がんセンター設置者に対し、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償(慰謝料)の支払いを求めて訴えを提起した。
第一審(千葉地判平25・12・11)は、Aが甲に対する報復目的で甲を手術の麻酔担当から外すなどしたと認め、国家賠償法1条1項に基づく損害賠償(慰謝料)として金50万円の支払いを認めたため、がんセンター病院側が控訴した。
本件は、内部通報の法的限界が争点となったものであるが、本判決はおよそ以下のように判示して、甲の請求の一部(ただし、慰謝料の額を一審より減額)を認容した。…
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