海上自衛隊事件(東京高判平26・4・23) いじめで自殺、慰謝料のみを認定した一審の判断は 他に申告があり予見は可能
自衛隊員の自殺といじめに相当因果関係はなく、慰謝料のみ認めた一審を不服として、遺族が国等に損害賠償を求めて控訴した。東京高裁はうつ病の発症は否定したが、自殺以前に他の乗員が上司に加害者から暴行を受けた旨を申告しており、乗員らの事情聴取を行えば被害者の心身の状況も把握できたとして、約7300万円の支払いを命じた。
上司らが調査怠る 賠償の責任を負う
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
A(被害者)は、平成15年に海上自衛隊に入隊し、同年12月から「たちかぜ」にて勤務した。
Y(加害者)は、平成元年から海上自衛隊に入隊したが、同人も平成9年ころから「たちかぜ」にて勤務していた。Yは、海上自衛隊員としての経験が長くなるにつれ、後輩隊員が業務上のミスをしたときや、単にYの機嫌が悪いときに、後輩隊員に対して、暴行などを行うようになり、Aに対しても、平成16年春頃以降、暴行を加えたり(少なくとも10回程度)、頻繁にエアガン等を用いてBB弾を撃ちつけたりした。またYは、平成15年12月頃から、後輩隊員に対しアダルトビデオなどを高額で売りつけるようになり、Aに対しても、平成16年8月以降、アダルトビデオ(合計100本程度)を高額(合計8万円~9万円)で売りつけた。Yの上司職員は、平成16年5月頃から、Yによるエアガンの持込みやAを含む後輩隊員に対する暴行などを認識していたが、実態調査やYに対する適切な指導を行わなかった。
一方、Aは、平成16年3月頃から、家族や同僚に自衛隊を辞めたいという話をするようになり、同年9月中旬頃から、Yに対する嫌悪感を募らせ落ち込んだ様子を見せるとともに、同僚に自殺の方法を調べて話すようになり、同年10月27日、自殺した。…
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