A住宅福祉協会事件(東京高判平26・7・10) 一審で主張しなかった懲戒解雇事由を二審で追加? 時機に後れた攻撃防御方法
業務命令違反など5つの懲戒事由を通知し解雇したところ、地位確認を求められた。一審では主に2つを解雇の根拠としたが、相当性を欠き解雇無効とされたため、代理人を変えて控訴した。二審で残りの事由を追加主張したが、東京高裁は攻撃防御方法の提出として時機に後れ、故意または重過失に当たると判断。証拠調べに時間を要し訴訟完結が遅延するとして却下した。
故意や重過失あり 審理が遅延し却下
筆者:弁護士 山田 靖典(経営法曹会議)
事案の概要
Xは昭和61年、厚生年金保険の被保険者に住宅資金の転貸事業等を行う一般財団法人Y協会に採用され、平成19年頃から団体信用生命保険(団信保険)の保険請求を行う業務を担当していた。平成25年2月28日、Xは、①人事異動命令に従わなかった、②業務上の指示にしばしば従わなかった、③厚労省年金局のヒアリングの際に、Y作成文書の内容を否定する発言をし、独自に作成した事実と相違する記載があるメモを提示した、④年金局に提出されたYの回答書が事実に反する旨を、独断で年金局へ連絡した、⑤Yとの相互協力による円滑な業務運営が今後も期待できないとの理由で、同年3月31日付で懲戒解雇の通知を受けた。
Xは懲戒解雇が無効であるとして、地位保全、賃金等の支払いを求めて提訴した。
一審判決(東京地判平26・2・25)は、前記③や④に関するYの主張事実は、懲戒事由に該当しないと認定したほか、4月1日から1年間の純保険料が年間受取保険料を上回った場合、団信保険より配当金が支払われるが、平成24年1月末頃、Xは配当金を多く受領するため、一部の保険金の請求を平成24年度に遅らせるよう上司から指示され、そのように調整したという、Xの供述には裏付けがあるとした。Yは、…
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