ティー・エム・イーほか事件(東京高判平27・2・26) 派遣のうつ病認識できず自殺に責任なしの判断は? 体調管理も安配義務の一環
うつ病自殺した派遣労働者の遺族が、派遣元・先らに損害賠償を求めた。罹患を認識できなかったとして棄却されたため控訴した。東京高裁は自殺に至るまでの重篤さは認識できないとしたが、「先」は健康面の不安を「元」に確認したうえで本人と面談しており、両社は体調不良を把握した以上、安全配慮義務の一環として、診断名や薬の把握など体調管理で配慮すべき義務を負うとした。
面談して状態認識 診断名や薬把握を
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
Kは、平成19年9月、被控訴人(一審被告)Y1社に派遣労働者として雇用され、派遣先である被控訴人(一審被告)Y3社に派遣されて中部電力浜岡原子力発電所で空調設備の監理業務等に従事していたが、平成22年12月に自宅で自殺した。Kの妻子である控訴人(一審原告)X1・X2は、Y1社とY3社に加えて、Y1社の代表取締役である被控訴人(一審被告)Y2、Y3社の出張所長であったY4の4者に対し、Kのうつ病を認識しまたは認識することができたのに安全配慮義務等を怠り、Kを自殺に至らしめたとして、Y2とY4に対しては不法行為に基づき、Y1社に対しては債務不履行および会社法350条に基づき、Y3社に対しては債務不履行および使用者責任に基づき、Kから相続した慰謝料および逸失利益相当の損害金とXら固有の慰謝料等の支払いを求めた。
Kは、遅くとも平成19年2月に精神科医院で受診し、不安障害や不眠症と診断され、その後通院を続け、21年10月下旬頃以降、うつ症状がみられるとして、支持的精神療法のほか、抗うつ剤や抗不安剤等の投与を毎月受けていた。22年3月と4月にKが休暇取得や早退をすることがあったことから、Y2が様子を聞いたところ、Kは、頭が痛く、よく眠れないので病院で睡眠薬をもらっている旨の話をした。…
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