A商事事件(東京地判平27・3・13) 産休中に退職扱いされ育休後も復帰できず賃金請求 復職予定日後の支払い認容
出産翌日に退職扱いされるなど育休後復職できなかったことから、未払賃金や慰謝料を求めた。東京地裁は、育休後は円滑に就業させる努力義務があるとしたうえで、復職予定日から約2カ月後に出社を要求した日までの不就労の帰責性を認め、賃金支払いを命じた。退職扱いには重大な過失があり、労基法の解雇制限や育介法の不利益取扱いに反する不法行為としている。
不就労の責任負う 出社求めた日まで
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、平成24年6月17日に出産したところ、人事担当者から退職扱いを告げられ、退職金として3万2500円が同封された退職通知を送付されたが、Xの求めにより、退職扱いは取り消され、産休後、育休を取得した。
平成25年4月1日、XはYに対して就労証明書の発行を依頼したが、Yはなかなか発行せず、Xは人事担当者とやり取りをした後、同年5月1日、労働局に対しあっせんを申請し(不調により終了)、その後、8月7日、労働審判を申し立て、労働契約を合意解約することを前提に、Yに対し、Xの給与1年分に相当する金銭の支払いを命じる審判がなされたが、Yが異議を申し立て訴訟に移行した。
Xは、復職予定日以降も出社していないことについて、YにXの復職を認める意思がなく、また、Yが就労証明書を発行しなかったことから子を保育園等に入園させることができなかったのが理由であるから、Yに帰責性があると主張して同日以降の賃金の支払いを求めるとともに、Yが産休中のXに退職通知を送付するなどした行為が違法であるとして、慰謝料の支払いを求めた。
判決のポイント
1 復職予定日以降の賃金請求権の有無
(1)平成25年4月1日以降のYの対応
Xが、産休前に行ったY代表者との面談を通じてY代表者が産休・育休に対して非常に消極的であると感じ、産休中には一方的に退職扱いにされ、…最終的には退職扱いは取り消されたものの、…
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