日本電気事件(東京地判平27・7・29) アスペルガー症で休職、期間満了の退職無効求める 復職できる精神状態にない
アスペルガー症候群の休職期間満了で退職扱いされたため地位確認等を求めた。東京地裁は、従前の予算管理業務は主治医が就労可能とした対人交渉の少ない部署だが、満了前の試験出社時に上司の指導を受け入れないなど不穏な行動があり就労に支障がある精神状態と判断。本人希望のソフトウェア開発業務は対人交渉が必要で、配置の現実的可能性がある業務は認められない。
上司指導も応じず 希望の異動先困難
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
甲は、平成15年4月1日、会社(日本電気株式会社)に総合職として雇用され、システムエンジニアとして1年、ソフトウェア開発部門に3カ月従事した。その後、平成16年10月ころから、平成22年4月までの約5年7カ月予算管理の業務に従事していた。
甲は、平成22年4月に統合失調症の疑いと診断され、同年7月30日、会社から、同日から平成24年2月29日まで休職を命じる旨の命令を受けて休職していたところ、その後、甲はアスペルガー症候群と診断された。甲は、会社から平成24年2月29日をもって休職期間満了で自然退職となる旨を告知され、以後、就労を拒絶された。
なお、会社の就業規則には、「業務外の疾病によって長期の療養を要する場合」には「休職を命ずる」、「休職中に休職の事由が消滅した者は、復職させる」「休職期間(私傷病休職の休職期間)が満了した者」は「自然退職する」旨の定めがある。
甲は、会社を被告として、休職期間満了時において就労が可能であったので、自然退職扱いは無効であるとして、労働契約上の地位にある等を主張して、訴えを提起したものである。本判決の争点は、業務外の私傷病により休職した甲が、休職期間満了時において、就業規則に定める「休職事由が消滅した者」に該当するか否かである。…
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