ANA大阪空港事件(大阪高判平27・9・29) 元従業員らが廃止済み退職功労加算の支払い求める 「内規」で拘束力は及ばない
元従業員らが、退職金の功労加算の支払いを求めた。支給基準を定めた内規は就業規則と一体で、廃止された平成20年までに基準を満たしていたと主張した。請求を斥けた一審同様大阪高裁も、内規を届け出ていないなど就業規則とはいえず拘束力はないと判断。労組の協定化要求を会社が拒否した経緯もあり、労働契約とする意思はなく労使慣行も認められないとした。
就業規則と異なる 労使慣行も認めず
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
本事件は、退職功労金の支給基準を内規として設けていたY社を退職した元従業員らおよびその相続人ら(以下「Xら」)が、以前Y社が労働組合に交付していた書面に記載されていた退職功労金の支給基準は就業規則と一体のものとして労働契約の内容になっているとして、Y社に対し、労働契約に基づき退職功労金および遅延損害金の支払いを求めた事案である。
なお、本事件判決は、一審判決(大阪地判平26・9・19)がXらの請求を棄却したため、これを不服としてXらが控訴したことによる控訴審の判決である。
Y社は、航空会社の地上ハンドリングサービス業務を主たる目的として設立された会社である。
Y社は、平成13年11月に退職金規程を改訂したが、それ以前の退職金規程(以下「旧退職金規程」)7条は、「在職中に特に功労があった者に対しては基本退職金の計算の範囲内での功労加算として加給する」と定めていた。
昭和55年10月、Y社は労働組合に対し、「退職功労金について」と題する書面(以下「昭和55年書面」)を交付した。それには、「退職功労金について、…
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