甲社事件(東京地判平27・10・30) 派遣元移り同職場で就労、くら替え社員に賠償請求 3年の競業避止長すぎ無効
派遣会社が、競業する派遣会社に転職した元従業員に対し競業避止規定に反するとして損害賠償を求めた。転職後も同じ派遣先で就労しており引き抜きの有無も争った。東京地裁は、1年勤務したに過ぎず3年の競業避止は長いこと、割増賃金も未払いだったことから、転職の禁止に合理性はなく公序良俗に反し無効と判断。転職先や派遣先との共謀も認められないとした。
勤続1年との比較 「引き抜き」認めず
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
原告は、労働者派遣事業、有料職業紹介事業等を目的とする株式会社であり、被告は平成24年4月1日から1年間、原告と雇用契約を締結し、O社に派遣され、退職までの間、同社T支社A部のbグループで設備積算業務に従事していた。被告は、原告を退職して労働者派遣事業等を営むA社に転職し、A社からO社に派遣され、同社T支社A部のcグループに所属している。
原告の就業規則には、退職後の競業避止義務として「退職日から起算して3年以内は、当社と『競業関係に立つ業種』に関与することを禁止する」等の規定があり、覚書には、出向業務にかかる出向先およびその他からの引き抜き行為には注意すべきだとして、「出向中知り得た事業者」への就職を禁止し、さらに、誓約書も差し入れさせていた(以上「本件競業避止規定」という)。
原告は、被告が、派遣先O社、派遣元事業者A社と引き抜きに関する共謀をして転職をし、同一派遣先での就労を継続したとして、被告に対して、雇用契約上の競業避止義務違反または不法行為に基づく損害賠償を求めて提訴した。
判決のポイント
1 引き抜き行為の共謀の有無…
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