北海道市町村職員退職手当組合事件(札幌高判平27・9・11) 業務上横領して退職金なし、被害18万円で重すぎ? 懲戒免職相当で不支給妥当
死亡した地方公務員の退職手当を、業務上横領を理由に全額不支給とされた遺族が処分取消しを求めた。被害額18万円に比べ処分を重すぎるとした一審に対し、支給事務を行う組合が控訴した。札幌高裁は、懲戒免職相当時は原則不支給の運用方針で、公金の不正な着服は額を問わず非難が大きく、反省せず弁償もないなど、約20年間勤続したが不支給処分相当とした。
反省や弁償もなく 約20年勤務したが
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
町職員であった甲野一郎(亡一郎)の妻(被控訴人)は、亡一郎がH町を死亡退職したことによる退職手当について、組合(控訴人)が行った平成26年11月26日付け支給制限処分(退職手当等763万4445円全額を不支給とする処分)が違法であると主張して、処分の取消しを求めた。
原審(札幌地判平27・4・8)は、亡一郎が懲戒免職等処分に該当する非違行為を行っていたものの、退職手当の全部を不支給とする処分は、裁量権を逸脱して違法であると判断して、妻の請求を認容した。組合はこれを不服として控訴した。
判決のポイント
退職手当支給についての運用方針は、懲戒免職処分に相当する非違行為を行った者については、①退職手当を全部不支給とするのを原則とし、②一部不支給にとどめる場合の「非違の内容及び程度」に関する勘案事情を限定列挙した上で、公務に対する国民の信頼に及ぼす影響に留意して慎重な検討を行うものとし、さらに、③その他の勘案事情を具体的に明記するものである。運用方針は、…
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