国・広島中央労基署長事件(広島高判平27・10・22) 仕事与えられずうつ病再発、労災不支給の取消請求 心理的な負荷強く業務災害
うつ病休職から復帰後、再発したのは仕事を与えられないなどパワハラが原因として、労災不支給処分の取消しを求めた。広島高裁は、本人の態度を理由に一方的に作業場所への入室を禁じ、3カ月間日報の整理以外担当させず、劣等感や恥辱感を与えたもので心理的負荷は強度と判断。発症との相当因果関係を認めた。配置の裁量権を逸脱しパワハラに該当し得るとした。
約3カ月業務なし パワハラにも該当
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
控訴人は、システムの運用保守等を事業内容とする会社(以下「本件会社」という)の正社員であった者である。
控訴人は、平成19年6月から11月までうつ病により休職したが同年12月3日復職し、本件会社において各種帳票を出力・カットする業務(運用業務のサポート)を行うこととなった。しかし業務完了報告等が不十分であったため取引先から問合せを受けたり、納品データの誤りを指摘されることなどが続いた。
平成21年2月頃、本件会社は、控訴人の業務内容を変更し、ジョブ・フロー(平成22年中の本件会社のシステムの見直し・移行を控え、本件会社における従前の業務内容を把握するための資料)の作成と印刷業務のサポート(用紙のカットおよび梱包)を行わせることとした(以下「本件業務変更」という)。しかし控訴人の作成したジョブ・フローは修正を要する箇所があったり、控訴人も「難しいのでできない」と申し出たことがあった。
本件業務変更の結果業務量が減少したこともあり、本件会社は、控訴人に対し、新たにMT(データ記憶媒体の磁気テープ)の廃棄準備作業を命じたが、控訴人は指示された場所で作業を行わず、またマシンルームの清掃を命じたが「ばかばかしい」などといって数日で作業を行わなくなった。…
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