中央労働基準監督署長事件(東京高判平28・4・27) 海外子会社の代表病死、特別加入必要とした一審は 出張扱いで労災保険を適用 ★
病死した海外子会社の代表兼現地法人の総経理が、特別加入していなかったため労災不支給とされた事案の控訴審。東京高裁は、一審を覆し、国内事業場の指揮命令に従う海外出張者と認定。業務遂行に当たって本社に日々連絡して指示を仰ぐなど決定権限は本社にあったこと、出勤簿を東京営業所に提出し労務管理に服していたことなどから、国内の保険関係に基づき給付の対象とした。
国内から指揮命令 本社に出勤簿提出
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
株式会社A社の上海現地法人(C社)の総経理であった甲が急性心筋梗塞を発症して死亡したことについて、甲の妻が、甲の死亡は業務上の死亡に当たるとして労災保険法に基づき遺族補償給付および葬祭料の支給請求をした。
中央労働基準監督署長は、甲の死亡は出張業務中の災害とは認められず、海外派遣者として特別加入の承認も受けていなかったので、労災保険法36条に基づく補償の対象にならないとして不支給決定をした。
甲の妻は、甲は海外出張者であるから労災保険の適用はあると主張して、これらの不支給決定の取消しを求めて、訴えを提起した。
海外出張した者が、出張中に業務災害を被った場合、労災保険の適用があるが、海外派遣者が現地で業務災害を被った場合、労災保険の適用はない。そこで、甲が海外出張者か、海外派遣者かが争われたものであるが、一審(東京地判平27・8・28、本紙第3063号)は、甲は海外出張者ではなく、海外派遣者であったと認定して、甲の妻の訴えを斥けた。
そこで、甲の妻は控訴した。本判決は、控訴審判決である。
本判決は、およそ以下のように判示して、一審判決とは逆に労災保険の不支給処分を取り消したものである。…
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