NHK(フランス語担当者)事件(東京地判平27・11・16) 震災後国外へ、職務放棄した外国人の委託解除は? 安全優先で退避に責任なし
業務委託でアナウンス業務を行うフランス人女性が、東日本大震災の数日後に連絡のうえ出国したところ、契約解除条項に基づき解除されたため無効等と訴えた。東京地裁は、安全優先の態度を無責任とは責められず、同様に避難した6人とは契約更新するなど、避難自体を解除条項に当たると解するのは均衡を欠くと判断。更新機会やその合理的期待を奪い不法行為とした。
各人で均衡を欠く 更新見込みに賠償
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
Yは、国内基幹放送、国際放送および協会国際衛星放送等を行うことを目的とする法人である。Xはフランス国籍を有する女性であり、平成2年以降、Yとの間で毎年度締結した契約に基づき、Yの放送するフランス語による海外向けラジオ放送のアナウンス業務および同業務に関連する翻訳業務等に従事していた。
Xが業務に従事するようになってから数年後より、毎年4月前後の時期に、Xが署名、Yが押印する形で、「業務委託契約書」等の表題による契約書を取り交わすようになり、平成22年度については、平成22年3月25日付「業務委託契約書」(以下「本件契約」という)が取り交わされた。同契約書には、有効期間(平成22年4月1日から平成23年3月31日まで)、無催告解除条項が記載されていた。
平成23年3月11日東日本大震災が発生した。Xは、同月15日午後2時30分から放送されるニュース原稿の翻訳業務およびアナウンス業務を担当する予定であったが、同日午前11時、Yに対し、この日は業務を行えない旨を告げ、同日午後7時頃に航空機で出国し、翌16日から同月22日までシンガポールに滞在した。
Xは平成23年3月24日頃、Yより、本件契約の無催告解除条項(「業務の実施内容が不十分又は不完全であり、改善の見込みがないとYが判断した場合」、「その他本件契約を継続し難い事由が生じたとYが判断した場合」)に基づき、同月25日付で本件契約を解除するとともに、…
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