東京メトロ事件(東京地判平27・12・25) 駅係員が電車内で痴漢、逮捕され諭旨解雇の効力は 社会的影響小さく懲戒重い
電車内の痴漢行為で逮捕され諭旨解雇された駅係員が処分無効を求めた。東京地裁は、略式命令の罰金20万円は処罰として悪質性の低い行為であり、マスコミ報道など社会的に周知もされず、企業秩序に与えた悪影響の程度は大きくないと判断。示談は成立に至らなかったが処分は重きに失するとした。懲戒委員会から弁明機会も与えられず手続きの相当性も疑義が残るとした。
弁明の機会もなく 示談は不成立だが
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、旅客鉄道事業の運営等を営む被告と雇用契約を締結した原告が、被告から懲戒処分である諭旨解雇処分を受け、平成26年4月25日付けで解雇されたところ、本件処分は無効である旨を主張して、被告に対し、原告が本件契約上の権利を有する地位にあることの確認および賃金等を求めた事案である。ちなみに解雇理由は原告が被告の運行する千代田線の車内において痴漢行為(以下「本件行為」という)をしたとして、東京都の公衆に著しく迷惑をかける暴力的不良行為等の防止に関する条例(以下「本件条例」という)違反の嫌疑で逮捕され、罰金の略式命令を受けたことによる。
判決のポイント
本件行為は男性が電車の中で5ないし6分にわたって当時14歳の被害女性の臀部及び大腿部の付近を着衣の上から触るというものであり、また、原告は、本件行為につき、略式命令を請求されるにとどまり、かつ、本件略式命令についても、罰金20万円の支払を命じられるにとどまったというのである。
以上のような本件行為の内容、態様等に加え、本件行為に対する処罰の根拠規定である本件条例8条1項2号、5条1項1号が定める法定刑が6月以下の懲役または50万円以下の罰金であることをも併せ考えれば、…
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