野村證券事件(東京地判平28・2・26) 情報漏洩でインサイダー報道、証券マンを懲戒解雇 注意や指導なく処分重すぎ
未公表の株式情報を社外に伝えたとして懲戒解雇された証券マンが地位確認等を求めた。証券取引等監視委員会からインサイダー取引の勧告を受け報道されたこと、情報漏洩の2つの懲戒事由について東京地裁は、情報伝達に関して事実関係から法の禁止行為に該当しないうえ、漏洩に当たる電話の会話を注意指導せず、弁解の機会も与えていないなど懲戒権の濫用とした。
金商法違反認めず 権利の濫用と判断
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
Y社は、有価証券の売買の媒介、取次ぎおよび代理、有価証券の引受けおよび売出し、有価証券の募集および売出しの取扱い等を目的とする株式会社である。Xは、平成19年3月にY社との間に労働契約を締結し、同年4月以降、海外機関投資家向け日本株営業の業務に従事した。
平成22年9月29日、A社はY社を主幹事証券会社として公募増資を行う旨を公表した。然るに、Y社の顧客B1社の元社員Bは、本件公募増資が公表される前の同年9月27日より、他の証券会社を介して株式を売り付けた。また、同じくB1社の元社員C(D社のトレーダー)は、同年9月28日より、他証券会社およびY社を介して、D社名義および同社の発注を受託している証券会社名義の証券口座により、A社の株式を売り付けた。
平成24年6月8日、証券取引等監視委員会は、本件公募増資につき調査した結果、①②の事実が認められたとして、内閣総理大臣および金融庁長官に対し、課徴金納付命令を発出するよう勧告するとともに、その旨公表した。
①Cは、A社と株式引受契約の締結に向けた交渉を行っていたXから、Y社の他の社員らが交渉に関し知り、Xがその職務に関し知った、A社の業務執行を決定する機関が株式の募集を行うことについての決定をした事実の伝達を受け、…
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