ヤマダ電機事件(前橋地裁高崎支判平28・5・19) うつ病自殺で労災認定されると安全配慮義務違反? 残業100時時間超えず関連否定
月100時間を超える残業等からうつ病を発症し自殺したとして労災認定され、遺族が安全配慮義務違反の損害賠償を求めた。前橋地裁高崎支部は、直近の残業を月94時間と認定したうえで、医学的知見からは長時間労働と精神疾患発症の関連性は示されておらず、時間のみで強い負荷とはいえないと判断。その他負荷は認められず、うつ病を発症したとは認められない。
他に強い負荷なく 医学的知見踏まえ
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
亡Kは、平成16年12月16日に、契約社員としてY社に採用され、平成19年3月16日からは、富山本店において、いわゆる黒物家電の売場で接客・販売業務を担当していたが、同年8月16日付で正社員に登用され、新潟県A市に新規開店する店舗(A店)の黒物フロア長に配置された。亡Kは、9月2日までは、引き続き富山本店において勤務し、3日に引っ越しをして5日からA店での勤務を開始し、21日に予定されている開店の準備作業に従事していたところ、19日、社宅の自室内で自殺した。
本件自殺については、平成22年12月20日に遺族から労災申請がなされ、労基署は、開店準備作業業務および正社員への昇進に伴う心理的負荷について、業務の困難度、経験と仕事のギャップ、責任の発生が認められるとし、また、死亡前1カ月の時間外労働時間は106時間21分であって恒常的長時間労働があり、特に死亡直前1週間の時間外労働時間が47時間30分と極度に多く、さらに職場の支援・協力も欠如していたとして、労災認定をした。
本件は、労災認定後、亡Kの相続人であるXらが、亡Kは長時間労働や過度な業務の負担によりうつ病に罹患して自殺したものであると主張して、Y社に安全配慮義務違反(債務不履行)に基づく損害賠償を求めたものである。…
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