大王製紙事件(東京地判平28・1・14) 異動拒否し懲戒解雇、「内部告発の報復」と地位確認 懲戒目的の出向命令は無効 ★
不正会計を内部告発した後に降格され、その後の出向命令に従わず懲戒解雇された元課長が、報復処分で無効と訴えた。東京地裁は、告発内容は伝聞や推測など証拠に乏しく、目的も経営陣失脚が狙いで正当性を欠き、名誉毀損等による降格を有効とした一方、出向は実質懲戒する趣旨で動機や目的が不当と判断。経験や適性を踏まえず出向命令権の濫用であり解雇無効とした。
経験や適性を無視 名誉毀損で降格に
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、被告に雇用されていた原告が、被告に対し、被告による配置転換命令、降格処分、出向命令、懲戒解雇はいずれも無効であると主張して、原告が労働契約上の権利を有し、降格処分前の地位にあること、配置転換先および出向先に勤務すべき労働契約上の義務がないことの確認を求めるとともに、労働契約に基づき、解雇後の未払賃金等を求めた。
また、被告が全く合理性のない配置転換命令等を乱発し、無効な降格処分および懲戒解雇をするなどした一連の行為が、被告の原告に対する不法行為を構成すると主張して、損害賠償金の支払いを求めた事案である。
判決のポイント
1、配転命令の効力
本件告発状は、会社及びその関係会社において不適切な会計処理がされていること等を内容とするものであったから、会社において、本件告発状の作成者である原告に対するヒアリングを実施するなどして本件告発状の記載内容を調査する必要があると判断したこと、そのために原告を会社の本社に在籍させておく必要があると判断したことは、…
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