ファイザー事件(東京地判平28・5・31) 管理職に降格規定を新設、一般職とされ差額求める 既得権是正でき合理的変更
管理職が就業規則の降格規定新設に伴い一般社員とされたため、減額部分の支払等を求めた。東京地裁は制度の必要性について、職務遂行状況と無関係な既得権が是正でき、一般社員には昇格機会の付与など意欲向上につながるほか、厳しい経営状況などから合理性を認容。非組と交渉がなくても不当とはいえないとした。評価は最低で年収比10%減も大きいとはいえない。
非組とは交渉不要 年収10%減を認容
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
被告は医薬品・医療用具等の製造・販売等を目的とする会社で、原告は社員である。
被告の人事制度は、社員を、管理監督者に該当する業務を担当する専門管理職と一般社員に区分し、各人の職務を評価し等級ないしランクに格付けする制度である。平成22年6月当時、原告は、専門管理職・担当課長職・職務等級14等級の資格にあった。
平成24年2月、被告は専門管理職の一般社員への降格に関する定めを就業規則に新設した。同降格制度は、7段階に分けられた新評価制度において下から2番目以下の評価(Deficient Results〈DR〉、またはSignificantly Deficient〈SD〉、分布は0~6%または0~3%)となった場合は降格の検討対象となり、降格となった場合は原則として一般社員のランクCに降格され、標準年収比10%減額となる。被告は、本件降格規定を定めるに先立ち、ユニオンショップ協定を締結する組合に説明を行い同意を得たほか、管理職に対しても事前に説明を行い質疑応答を行った。
原告には、仕事に単純ミスや不備が多い、業務に対するオーナーシップに欠けている、資料作成後に関係上司等の了解をとらずに他部署に伝える、就業時間中に居眠りをするといった問題があったため、被告は注意改善指導を行ったが、原告は真摯に受け入れようとせず、勤務態度に改善はみられなかった。…
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