ツクイほか事件(福岡地裁小倉支判平28・4・19) 妊娠後の業務軽減要求を放置されマタハラと訴える 妊婦への健康配慮義務違反
妊娠した介護職員が、業務軽減を求めた面談における上司の発言やその後配慮がなされずマタハラとして慰謝料を求めた。福岡地裁小倉支部は、面談で上司が業務態度の改善指導に終始したことは配慮不足で人格権侵害としたほか、面談から1カ月経っても対応をせず健康配慮義務に違反するとした。会社も就業環境の整備義務に違反し、連帯して35万円の賠償を命じた。
1カ月内に対応を 35万円賠償命じる
筆者:弁護士 岩本 充史
事案の概要
Xは、介護サービスを営むY社において介護職員として就労していた。Xは、営業所の所長であったY2は、職場の管理者として、妊婦であったXの健康に配慮し、良好な職場環境を整備する義務を負っていたが、Xから他の軽易な業務への転換を求められたにもかかわらず転換せず、また、Xの勤務時間を一方的に短縮したり、Xを無視するなどのマタハラおよびパワハラをして上記義務を怠り、良好な職場で働くXの権利を侵害し、Y社は、Y2への指導を怠ったなどと主張して、①Y2に対しては、不法行為に基づき、②Y社に対しては、使用者責任に基づき、さらに、労働契約上の就業環境整備義務に反したと主張して、債務不履行に基づき、連帯して慰謝料500万円の損害賠償金等の支払いを求めた。本判決は、①Y2の不法行為責任、②Y社の使用者責任および職場環境整備義務違反による債務不履行責任を認め、慰謝料として35万円の限度で認め、その余の請求を棄却した。
事実関係のポイント
(1)平25・8・1、XからY2に妊娠報告、(2)同9・13、XとY2が面談し業務の軽減を求めた(9月面談)、(3)同12・3、XとY社(C本部長)が面談し、業務の軽減を求めた(12月面談)、(4)同12・4、Xは、切迫早産のため安静加療を要するとの診断を受けた。…
この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら