L社事件(東京地判平28・8・25) 60歳前後で賃金差、同一労働同一賃金に違反と提訴 2割減は社会通念から許容 ★
他社を定年退職後に嘱託採用された車両管理者が、再就職先に対し60歳前の正社員との基本給の差は、同一価値労働同一賃金の原則に反すると訴えた。東京地裁は、法令に同規定はないが不合理な差別は不法行為になり得ると判断。雇用保険や老齢年金を含め60歳前の8割程度を得るなど社会通念上不相当とはいえないとした。異動の配慮から職務は同等同質でないとした。
公的な給付も考慮 不合理な差別なし
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
被告は自家用自動車管理業等を行う会社である。
原告は他社との間で定年退職後も有期契約を締結して勤務していたが、平成20年2月頃、被告の求人募集に応募し、同年3月11日付で被告に車両管理者として採用された(平成26年7月4日まで勤務)。
被告では、車両管理者の雇用形態として、専任社員と専任嘱託契約社員とがある。前者は、満60歳定年とする無期契約社員であり、後者は、原則として満65歳を最終雇用期間の終期とする有期契約社員であり、そのほとんどが満60歳を超える者である。原告は被告に専任嘱託契約社員として採用されたが、専任社員より基本給与の金額が低かった。その一方で原告は高年齢者雇用継続基本給付金と在職老齢年金(以下単に「給付金等」という)を受給していたが、これらと被告からの賃金の合計額は、本件想定初年度専任社員等(主に採用初年度の専任社員)の賃金額の77.32%~85.29%の水準であった。なお、60歳未満と60歳以上の者において、車両管理者としての業務内容は同等である一方、60歳以上の者には異動の点で一定の配慮がなされていたほか、原告についていえば、手待時間や運転業務に従事する時間の長さ等において、60歳未満の者の担当業務とは差異があり、断続的労働としての許可(労基法41条3号)を受けていた。原告は、専任社員との処遇差は同一価値労働同一賃金の原則に反し違法であるとして訴訟提起した。…
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