今井建設ほか事件(大阪高判平28・4・15) ビル賃貸業で家賃滞納や空室、担当者に賠償責任? 誓約書の支払約束は無効に
ビル賃貸業で賃料滞納や空室が続き、担当者が誓約書に基づく損害賠償責任を負うか争った。元従業員は自らの賃料横領の賠償を含む約770万円の返還を求めたが、棄却されたため控訴した。大阪高裁は、滞納等は当然予想される損害で、多額の支払いを真意で約束するとは考え難いとして請求を一部認めたが、横領は事実と推定でき約622万円の支払約束は有効とした。
通常生じ得る損害 横領分は弁済必要
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
一審原告Xは、一審被告Y1社に雇用され、賃貸用不動産の管理業務を行っていたが退職した者であり、①Y1社に対し、(1)未払時間外手当等267万余円および未払賃金50万円、(2)労働基準法114条の付加金232万余円などを請求し、②一審被告らに対し、XがY1社において管理していた一審被告Y2、Y3およびY4の所有するマンションないしビルに関する管理の懈怠ないし賃料の横領による損害賠償としてXが支払った770万余円を、不法行為または不当利得を根拠として請求した。
一審(京都地判平26・12・25)は、Xの請求のうち、未払時間外手当等283万余円、付加金204万余円などのみを認めた。これに対し、XとY1社が控訴した。
その後、Y1社は、Xに対し、原判決が認容した406万余円を支払った。
その結果、控訴審の審理対象は、①未払時間外手当等の請求のうち早朝の部分およびそれに対応する付加金請求の当否、②一審被告らに対する不法行為または不当利得に基づく請求の当否等となった。本欄では、②について取り上げる。…
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