専修大学(差戻審)事件(東京高判平28・9・12) 労災休職中に打切補償、解雇制限解除され効力は? 労働能力を喪失し復職困難 ★
労災認定された頸肩腕症候群による休職が計8年弱に及び、平均賃金1200日分の打切補償を支払って解雇した。最高裁は、解雇制限は解除されるが解雇の有効性を判断するため差し戻した。東京高裁は、労務提供の不能や労働能力の喪失が認められ、解雇は社会通念上相当と判断。リハビリを認める根拠規定はなく、疾病回復のための配慮を欠くといった事情も認められない。
リハビリ規定なし 配慮欠くといえず
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
甲は、平成9年4月1日に専修大学(以下、A)との間で雇用契約を締結した。
甲は、平成15年3月13日、頸肩腕症候群(以下、本件疾病)に罹患していると診断を受けた。同年4月以降、甲が本件疾病を理由に欠勤を繰り返すようになったことから、Aは、同年5月1日、甲を別な課に異動させるなどの措置を取ったが、欠勤は続いた。
その後、甲は、1年間休職して復職したが、完治していなかった本件疾病により、平成18年1月17日から長期欠勤を余儀なくされ、平成19年3月31日にいったんはAを退職した。
平成19年11月6日、中央労基署長は、平成15年3月20日時点で本件疾病は「業務上の疾病」と認定し、甲に対し、療養補償給付および休業補償給付の支給を決定した。Aは、平成20年6月25日、平成19年3月31日付退職を取り消して、同日に遡って甲を復職させた。その一方で、Aは、甲の平成15年6月3日以降の欠勤を、Aの勤務員災害補償規程(本件規程)の業務災害による欠勤と認定した。
平成21年1月17日、Aは、甲の平成18年1月17日以降の欠勤が3年に達したが、就労できない状態が続いたため、本件規程に基づき甲を2年間の労災休職とした。
平成23年1月16日、2年間の労災休職期間が満了した。同年9月1日、Aは甲に対し、復職を可能とする客観的資料の提出を求めたが、甲は応じなかった。…
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