トヨタ自動車ほか事件(名古屋高判平28・9・28) 定年後も事務職を希望、「基準」満たさず清掃業務に 別職種での継続雇用は不可
定年後継続雇用で事務職の選定基準を満たさず清掃業務とされたため退職した者が、地位確認等を求めた。基準は相当として請求を棄却した一審に対し二審は、労働条件の提示に裁量はあるが、適格性を欠くなど解雇相当の事情がない限り、まるで別の職種は許されないと判断。賃金は年金の85%で低額とはいえないが、到底受け入れ難い業務として慰謝料を一部認めた。
解雇の事情もなく 賃金は低くないが
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
被控訴人は、自動車等の製造販売等を業とする会社である。
控訴人は、大学卒業後、被控訴人に事技職として雇用され、定年までデスクワークを主体とする事務職に従事していた。同人は、定年前はG部に所属し、主任の資格を有していた。
被控訴人は、定年を満60歳と定めるとともに、定年退職社員のうち、再雇用を希望する者については、定年時点で解雇事由に該当する者を除き、再雇用するものとし、具体的には、労使協定に定める判断基準(以下「本件判断基準」という)の全てを満たす者に対してはスキルドパートナーとしての職務を、同判断基準のいずれかを満たさない者に対してはパートタイマー就業規則に定める職務を提示することとしていた。
控訴人は定年時に再雇用を希望したが、本件判断基準を満たさなかったため、被控訴人は、控訴人に対し、パートタイマーとしての再雇用の労働条件として、①G部における清掃業務等を職務とする、②1日当たり4時間のハーフタイム勤務として、時給を1000円(昇給なし)とするものを提示した。控訴人は、かかる労働条件に同意しなかったため、再雇用されることなく、被控訴人を定年退職した。…
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