O公立大学法人事件(京都地判平28・3・29) アスペルガー症由来の問題行動は矯正が困難と解雇 障害者の雇用継続努力欠く
数々の問題行動はアスペルガー症候群に由来し矯正困難として、大学が女性准教授を解雇した。京都地裁は、合理的配慮義務を定めた障雇法の理念や趣旨から一定の配慮が求められ、ジョブコーチの支援等を検討した形跡すらなく雇用継続の努力が限界を超えていたとはいえないとした。指導・指摘が全くなされておらず、改善可能性がなかったと即断できないとしている。
一定配慮が必要に 本人へ指導行わず
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
Yは公立大学法人であり、O大学を設置運営している。
Xは、平成20年4月1日までに、Yとの間で期限の定めのない労働契約を締結し、平成26年3月31日までO大学の准教授として勤務していた。Xは、平成20年3月にアスペルガー症候群との診断を受けていたが、Yに採用される際に告知せず、平成22年1月、O大学学部長(当時)に自身がアスペルガー症候群であることを伝えた。
平成23年10月頃、Xは大学関係では旧姓を使用する一方、生協の組合員加入は戸籍上の氏名を使用していたため、生協職員がXのことを組合員ではないと認識し、それを大学の経理担当者に告げてXは生協にて売掛はできないと説明した。これに対し、Xは、当該生協職員が大学の経理担当者にまでXが詐欺的なことをしたかのように吹聴したのは名誉毀損行為であるなどとして、生協の店舗で当該生協職員に土下座と謝罪をさせた。上記出来事は、学生からの匿名の手紙および生協理事長からの申入れによりO大学も認識したが、O大学は注意すると却って深刻な問題になると考えXの精神状態が安定するのを待つこととした。
平成24年1月、Xは、アスペルガー症候群の二次障害としての適応障害を発症し、ストレッサー(ストレスの原因)となる教員との接触を避けることが必要との旨の診断書を提出し、…
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