日本アイ・ビー・エム事件(東京地判平28・3・28) 約25年間勤務し成績不良や能力不足の普通解雇は? 改善機会を与えず権利濫用
成績不良等を理由に普通解雇された事案で、約25年勤務し、雇用を継続できないほどの事情はないとして地位確認等を求めた。東京地裁は、業績はあくまで相対評価で低評価が続いてもただちに解雇相当といえず、過去配転もされ職種や勤務地限定もないなど職種転換や降格を検討したり、解雇の可能性を伝えたうえで業績改善の機会を与えるべきとして解雇無効とした。
あくまで相対評価 職種転換や降格を
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
会社は、情報システムに関わる製品、サービスの提供等を業とする株式会社である。甲は、昭和62年4月に期限の定めなく採用された者で、営業職に配属され、平成元年に副主任となり、バンド6となった(バンドとは、1から10まで設定された従業員の職位であり数字が大きいほど職位が高い)。
甲は、平成5年7月、SI営業推進部(コンピュータープログラムの開発を請け負いまたは支援する契約を締結するために社内承認をサポートする業務を行う部署)に異動となった。平成9年には、不眠症状が出て、平成10年には休職した。平成11年、残業を制限して復職し、金融サービス事業部を経て、平成18年7月、営業の後方支援事務を行う部署へ異動となった。甲は、平成24年4月、残業代の支払いを求める訴訟を提起した。同年6月には、退職勧奨を受けたが応じなかった。
会社は平成24年7月20日、甲に対し、同月26日付で業績不良を理由として解雇予告の意思表示をした。
甲は、全日本金属情報機器労働組合日本IBM支部の組合員であり、同時期に業績不良を理由として解雇予告された乙および丙とともに解雇撤回を申し入れたが、撤回に到らなかったため、平成24年10月25日に訴えを提起した。
会社は、甲について、業務の能率、生産性が著しく悪く、業績は極めて低かったこと、助言・指導や業務変更を試みても改善しないどころか悪化したことから解雇したもので、…
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