中央労働基準監督署長事件(東京地判平27・8・28) 海外営業所代表が病死、出張中と労災請求も不支給 特別加入せず保険給付なし
海外営業所の代表として赴任し現地法人の総経理を兼務する者が急性心筋梗塞で死亡、遺族が出張中の労災として給付請求した。海外派遣の特別加入をせず不支給とされたため処分取消しを求めた。東京地裁は、派遣と出張の区分は滞在期間の長短でなく指揮命令関係等から判断すべきとした。独立事業場に属し、責任者の立場にあることから派遣と認めて請求を斥けた。
現地で「指揮命令」 独立事業場と扱う
筆者:弁護士 渡部 邦昭(経営法曹会議)
事案の概要
株式会社A社が、上海に立ち上げたB社の主席代表兼上海現地法人(C社)の総経理であった甲が急性心筋梗塞を発症して死亡したことについて、甲の妻が、甲の死亡は業務上の死亡に当たるとして労災保険法に基づき遺族補償給付および葬祭料の支給請求をした。中央労働基準監督署長は、甲の死亡は出張業務中の災害とは認められず、海外派遣者として特別加入の承認も受けていなかったので、労災保険法36条に基づく補償の対象にならないとして、いずれの請求に対しても不支給決定をした。甲の妻は、甲は海外出張者であるから労災保険の適用はあると主張して、不支給決定の取消しを求めて本件訴えを提起したものである。
海外出張した者が、海外出張中に業務災害を被った場合、労災保険の適用があるが、海外派遣者が現地で業務災害を被った場合、労災保険の適用はない。
そこで、甲が海外出張者か、海外派遣者かが争われたものである。
本判決は、およそ以下のように判示して、甲は海外派遣者であったとして、甲の妻の訴えを斥けたものである。…
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