M社事件(東京地判平27・8・7) 成績不良者へ叱咤激励したはずの言動で降格処分? 幹部の職責に反しパワハラ
営業ノルマ未達成の部下6人に対するパワハラを理由に懲戒処分として降格された元役員補佐が、叱咤激励だったと主張して処分無効を求めた。東京地裁は、「辞めると一筆書け」など約30の言動は、就業規則のパワハラ定義に当てはまり懲戒事由にも該当すると判断。適切に指導せず、退職を強要し執拗に迫ったことは極めて悪質で、幹部としての地位職責に反し処分相当とした。
退職を強要し悪質 指導せず能力否定
筆者:弁護士 牛嶋 勉(経営法曹会議)
事案の概要
原告Xは、平成3年12月にY社に入社し、平成25年3月に降格処分を受ける直前は、「理事(8等級)、担当役員補佐兼流通営業部長」という地位にあった。Y社は、過去のパワーハラスメント(パワハラ)を理由として、Xを「副理事(7等級)、担当部長(略)」という地位に降格した。Xは、悪意はなく、叱咤激励などとして本件処分の無効確認を求めた。Y社は、本件訴訟において、問題となったXの言動をまとめた本件言動一覧表のうち、26項目の言動が懲戒事由であるパワハラに該当し、本件処分は相当であると主張した。
判決のポイント
(D氏に対する)本件言動一覧表No.25、26については…原告はD氏の説明を「止めろ」と述べたと理解でき、「辞めろ」と述べたとは認められないし、…D氏自身が…パワハラとは感じていないと供述している…ことも考慮すれば、被告パワハラ定義に該当するとまではいえない。
…No.10から19の各言動(編注:「会社を辞めると一筆書け」「別の会社に転職しろ」など)については、…
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