クレディ・スイス証券事件(最一小判平27・3・5) 解雇無効で業績連動型報酬の支払い命じた原審は? 支給額決定前で請求権なし
外資証券会社の元従業員が、解雇無効と年単位で支給されるIPC報酬(業績連動型報酬)の支払いを求めた。二審は地位確認を認容し、労働契約に基づく賃金として約1000万円の支払いを命じたため会社が上告。最高裁は会社が個々の業績等を勘案し、支給有無や額、算定方法を決定して初めて請求権が生じると判断。労使慣行もないなど報酬支払いを命じた部分を破棄した。
業績など勘案必要 労使慣行も認めず
筆者:弁護士 中町 誠(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、上告人の従業員であった被上告人が、上告人から退職勧奨および自宅待機命令を受けた後に解雇(整理解雇)されたことから、上告人に対し、以下のとおり、解雇の無効確認と解雇期間中の賃金支払い、不法行為に基づく損害賠償等を求めた事案である。
(1)上記解雇が違法、無効であると主張して、労働契約上の権利を有する地位にあることの確認等を求めるとともに、(2)上告人が違法な退職勧奨等をして被上告人に業績連動型の報酬であるインセンティブ・パフォーマンス・コンペンセイション・アワード(以下、「IPC報酬」という)を支給しなかったことが不法行為または債務不履行を構成すると主張して、平成20年度および同21年度分のIPC報酬相当額等の損害賠償を求め、また、(3)上記(2)のIPC報酬相当額の損害賠償請求と選択的に、労働契約に基づく賃金として上記各年度分のIPC報酬の支払いを求めた。
原審(東京高判平25・1・31)は、上記の解雇が解雇権を濫用したものとして無効であるとしたうえで、被上告人のIPC報酬請求につき、本件労働契約が存続している限り、上告人は、被上告人に対し、本件労働契約に基づく賃金の一部として、基本給に加え、被上告人の業績に応じた額のIPC報酬を支払う義務を負うというべきであるところ、…
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