国・池袋労基署長(光通信グループ)事件(大阪地判平27・2・4) 心不全で急死、残業は過労死基準下回り労災不支給 相当因果関係認め処分覆す ★
虚血性心不全により33歳で死亡した者の遺族が労災請求したところ、発症前6カ月の時間外労働が「過労死認定基準」を下回り不支給とされたため処分取消しを求めた。大阪地裁は、発症3年前からの30カ月では、残業が100時間と80時間を超える月が半数以上を占め、恒常的な長時間労働で疲労を蓄積させ疾病を増悪させたと判断し、業務との相当因果関係を認めた。
半年より前を考慮 月100時間超も
筆者:弁護士 岡芹 健夫(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、Y社に雇用され、その子会社に出向した従業員Aが、虚血性心不全(以下、「本件疾病」)により死亡したことを受け、その相続人である両親(以下、「Xら」)が、労災申請を行ったところ、池袋労働基準監督署長が労災保険法に基づく遺族補償給付等を支給しない旨の処分(以下、「本件不支給処分」)を行ったため、Xらが本件不支給処分は違法であるとしてその取消しを求めた事案である。
Aは、平成11年3月にY社に雇用され、その後、Bに出向し、同18年11月に営業本部のマネージャーに昇進した。平成19年4月、法人を顧客とするOA機器のリース販売の責任者となり、同年3月頃から、退勤時刻が午後9時~10時を過ぎることがしばしばあり、また、1カ月に2~3日、所定休日に出勤していた。
平成20年11月にCに出向した後も、引き続き退勤時刻が午後9時~10時を過ぎることがしばしばあり、所定休日に出勤することもあった。
平成21年初め頃より、Aは交際相手に「疲れた」「しんどい」としばしば述べるようになり、同年2月15日早朝には、それまでなかったようないびきと寝汗をかいて起き上がり、「胸が苦しい」、「右手がしびれる」などと訴えた。また、同年2~3月頃、職場で顔色が悪く、朝、出勤すると「疲れた」といって椅子にもたれかかったりしていた。
平成21年5月から、AはBに出向し営業部のマネージャーとして勤務し、部下の管理業務のほか、法人顧客についてクレーム対応業務等も行っていた。…
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