甲野堂薬局事件(最一小判平26・3・6) 控訴中に未払残業代払うも付加金認容され会社上告 清算後は支払命令できない
未払割増賃金等の支払いを命じられた会社が控訴し、審理中に賃金清算したが、判決で付加金の支払いを命じられたため上告した。最高裁は、付加金は法違反の場合に当然に権利が発生するものではないとしたうえで、口頭弁論終結時までに法違反の状況が消滅すれば、裁判所は支払いを命じることはできないと判断。付加金請求を認容した二審判決を一部破棄した。
法違反の状況消滅 当然に権利生じず
筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)
事案の概要
本件は、上告人(会社)が、本訴として、被上告人(元従業員)を相手に、被上告人に対する未払賃金債務が173万1919円を超えて存在しないことの確認を求め、被上告人が、反訴として、上告人を相手に、未払賃金の支払等を求めるとともに、労働基準法37条所定の割増賃金の未払金(以下「未払割増賃金」という)に係る同法114条の付加金の支払いを求めた事案である。
本件訴訟の上記付加金請求に係る経緯等は次のとおりである。
(1)被上告人は、第一審係属中の平成22年10月18日、上告人に対し、反訴請求として、未払割増賃金181万6902円およびこれに対する同年3月1日から支払済みまで年6分の割合による遅延損害金の支払いを求める(以下、「本件割増賃金請求」という)とともに、上記未払割増賃金に係る労基法114条の付加金124万2344円(上記未払割増賃金のうち同条ただし書所定の期間が経過していない部分に係るもの)およびこれに対する判決確定の日の翌日から支払済みまで年5分の割合による遅延損害金の支払いを求めた(以下「本件付加金請求」という)。…
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