東京メトロ(諭旨解雇・仮処分)事件(東京地決平26・8・12) 駅員が電車内で痴漢、起訴され諭旨解雇の扱いは? 非違行為の態様から重すぎ
駅係員が、電車内の痴漢行為により条例違反で逮捕、起訴され諭旨解雇されたことから、地位保全と賃金仮払いを求めた。東京地裁は非違行為の態様や法定刑では軽微な20万円の罰金であることを考慮したうえで、被害者側に示談を拒否され起訴、解雇に至ったことは酷で、より緩やかな処分も可能と判断。賃金仮払いは認めたがこれ以上に地位保全の必要性はないとした。
罰金20万円で軽微 地位保全は認めず
筆者:弁護士 石井 妙子(経営法曹会議)
事案の概要
Xは、鉄道会社Yの駅係員として勤務していたが、平成25年某月某日、通勤電車内(Yが事業運営する路線内)で痴漢行為をしたとして、迷惑防止条例違反の被疑事実で逮捕された。行為態様は、当時14歳の被害女性に対し、臀部付近および大腿部付近を着衣の上から左手で触るなどしたというものであった。
Xは、刑事手続きにおいては痴漢行為を争わず、示談をして起訴猶予をめざすこととし、刑事事件の弁護人を通じて、被害者およびその家族に対して謝罪の念を伝えるとともに被害弁償を申し出たものの、被害者の母親の理解が得られず、示談は成立しなかった。その結果、Xは、翌年2月、簡易裁判所において罰金20万円の略式命令を受けた。
Yは、Xの行為は「職務の内外を問わず会社の名誉を損ない又は社員としての体面を汚す行為があったとき」に該当するとして、平成26年4月、Xに対し諭旨解雇を通告した。Xは、諭旨解雇無効であると主張して、雇用契約上の地位保全および賃金仮払いを求めて仮処分を申し立てた。
裁判所は、諭旨解雇処分を無効として賃金仮払いを命じた(地位保全の仮処分については、賃金仮払い以上のものを認める保全の必要性なしとして却下)。…
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