三重県・県教委事件(名古屋高判平25・9・5) 管理職が酒気帯びで逮捕、退職手当不支給は違法? 指導監督の立場で責任重い
公立高校の管理職員が、年休の取得日に飲酒運転で逮捕され、懲戒免職に伴い約2500万円の退職手当を全額不支給とされたため処分取消を求めた。一審は不支給のみ違法としたが、名古屋高裁は法違反の3倍の高濃度で悪質なこと、指導体制に悪影響を及ぼす可能性があり責任は重いと判断。飲酒運転撲滅に向けた社会秩序維持の強い要請に反し、不支給は適法とした。
社会秩序に反する 高濃度であり悪質
筆者:弁護士 山田 靖典(経営法曹会議)
事案の概要
Y県立高校の職員(管理職)であったXは、年休を取得し、平成22年7月2日午後3時過ぎから5時ごろまで、町内の夏祭りの打合せ会において、ビンビール(663ml)2本、缶酎ハイ(250ml)2本を飲んだ。閉会後、自動車を運転して、喫茶店などに立ち寄り自宅に向かう途中、午後6時45分ごろ、検問を受け、呼気検査で呼気1ℓ中に0.54mgのアルコールが検出、道路交通法65条1項違反で検挙された。略式裁判にて罰金30万円に処せられ、運転免許も取り消されたが、高校の校長に対し、同年9月17日まで本件酒気帯び運転による刑事処罰、行政処分を報告しなかった。しかし、同日、匿名の電話で発覚した。
そこで、地方公務員法、Yの公立学校職員の退職手当に関する条例により、XはYより免職および退職手当不支給処分を受けたが、これを不服として、右両処分の取消しを求めて提訴した。
一審判決(津地判平25・3・28)は、飲酒運転撲滅に向けた社会秩序維持の強い要請の下では、YのXに対する本件免職処分が社会通念上、著しく妥当性を欠き裁量権の範囲を逸脱したとはいえず、免職処分を有効としたが、退職金不支給処分は、本件非違行為がXの長年の勤続の功績を全て抹消するほどの重大な非違行為であるとか、賃金の後払いの性格や退職後の生活保障の性格を全て否定すべきものとまではいえず、社会通念上著しく妥当性を欠き裁量権を逸脱濫用したもので、無効とした(X、Yともに控訴)。…
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