医療法人稲門会事件(大阪高判平26・7・18) 育休3カ月取得で翌年度の昇給見送る措置は妥当か 不利益取扱いに当たり無効

2015.03.09 【判決日:2014.07.18】
  • list
  • クリップしました

    クリップを外しました

    これ以上クリップできません

    クリップ数が上限数の100に達しているため、クリップできませんでした。クリップ数を減らしてから再度クリップ願います。

    マイクリップ一覧へ

    申し訳ございません

    クリップの操作を受け付けることができませんでした。しばらく時間をおいてから再度お試し願います。

 育休を3カ月以上取ると翌年度の職能給を昇給させない就業規則は無効として、男性看護師が病院に慰謝料などを求めた控訴審。一審は違法性を否定したが、大阪高裁は、年休や労災の休業が3か月に及んでも昇給の対象外にならず、育休だけ不利益に扱う合理的理由はないとした。規定は育休取得の権利を抑制し無効で、昇給した場合の賃金額との差額相当の支払いを命じた。

他の不就労と差が 合理的理由はない

筆者:弁護士 緒方 彰人(経営法曹会議)

事案の概要

 被控訴人は、病院等を経営する医療法人であり、控訴人は、被控訴人の経営する病院において看護師として勤務していた者である。

 被控訴人が支給していた給与のうち職能給は、経験年数と能力により定まる等級・号俸によって変動する給与である。同職能給は、前年度の評価がB以上であれば、当年度の4月度給与から昇給されるが、被控訴人は、賃金規定において「昇給については、育児休業中は本人給のみの昇給とします」と定め、前年度に3カ月以上の育児休業をした者は翌年度の職能給を昇給させない運用をしていた(以下、かかる運用と併せ上記賃金規定のことを「本件不昇給規定」という)が、これは、1年のうち不就労期間が3カ月以上に及ぶと、職能給の昇給に必要な現場での就労経験を積むことができず、能力向上を期待することができないという趣旨によるものであった。

 控訴人は、平成22年9月4日から12月3日まで育休を取得した。そのため、平成22年度の評価はB以上であったが、平成23年4月1日付けの定期昇給においては、本件不昇給規定に基づき、職能給は昇給されなかった(以下「本件不昇給」という)。

 そこで、控訴人は、本件不昇給は、育児介護休業法10条に定める不利益取扱いに該当し公序良俗(民法90条)に反する違法行為であると主張して…

この記事の全文は、労働新聞の定期購読者様のみご覧いただけます。
▶定期購読のご案内はこちら

労働新聞電子版へログイン

労働新聞電子版は労働新聞購読者専用のサービスです。

詳しくは労働新聞・安全スタッフ電子版のご案内をご覧ください。

平成27年3月9日第3008号14面 掲載
  • 広告
  • 広告

あわせて読みたい

もっと見る
ページトップ
 

ご利用いただけない機能です


ご利用いただけません。